**思春期特発性側弯症は、思春期(10歳頃~骨成熟まで)に発症する原因不明の脊柱の側弯症(背骨が横に湾曲する状態)です。側弯の進行具合によっては外見や健康に影響を及ぼすことがあり、早期発見と適切な治療が重要です。以下では、その特徴、原因、診断、治療法、予防について詳しく解説します。
1. 特徴と症状
思春期特発性側弯症の特徴は以下の通りです:
•発症年齢:10歳以降、特に成長期に多い。
•性差:軽度の側弯は男女ともに発症しますが、進行するケースは女性に多い。
•症状:
•背中や腰の左右非対称(肩や腰の高さが異なる)。
•肋骨や背中の隆起(前屈すると目立つ)。
•痛みや神経症状は通常ありませんが、進行すると呼吸機能に影響を与える場合があります。
2. 原因
特発性側弯症は明確な原因が特定されていませんが、以下の要因が関与すると考えられています:
•遺伝的要因:家族内で発症するケースが多く、遺伝的素因が示唆されています。
•成長速度:急激な成長期に発症しやすい。
•ホルモンバランスや神経筋の影響:成長ホルモンや骨代謝、筋肉のバランスの影響が可能性として挙げられます。
3. 診断
診断には以下の手法が用いられます:
(1) 視診
•背中や腰の左右非対称、肩や骨盤の高さの違いを確認します。
•アダムス前屈試験:患者に前屈してもらい、肋骨の隆起や左右の非対称性を確認します。
(2) 画像検査
•X線検査:脊柱の湾曲の程度を測定し、コブ角(Cobb角)として評価します。
•軽度:10°未満(正常範囲)。
•中等度:10°~25°。
•重度:25°以上。
(3) その他
•必要に応じてMRIやCTを用いて、神経や脊髄の異常を確認します(特に非特発性側弯症の疑いがある場合)。
4. 治療法
治療は、側弯の程度や進行の可能性、患者の成長段階に応じて決定されます。
(1) 経過観察
•軽度(Cobb角10°~20°):成長期が終わるまで定期的に検査を行い、進行を監視します。
(2) 装具療法
•中等度(Cobb角20°~40°):成長期にある患者に対して、装具(ブレース)を使用し、側弯の進行を抑制します。
•装着時間:通常1日20時間以上が推奨されます。
(3) 手術療法
•重度(Cobb角40°以上)または進行が早い場合、手術を検討します。
•脊椎矯正固定術:金属棒やスクリューを使用して脊柱を矯正し固定する。
•手術の目的は、側弯の進行を防ぎ、脊柱の安定性を保つことです。
5. 合併症と予後
(1) 合併症
•重度の側弯では、心肺機能障害や腰痛が生じる可能性があります。
•外見への影響が心理的な負担を引き起こす場合もあります。
(2) 予後
•軽度の側弯は進行せず、治療を必要としないケースが多い。
•装具療法や手術療法で適切に管理すれば、日常生活やスポーツ活動に支障をきたさないことがほとんどです。
6. 予防と早期発見
思春期特発性側弯症を完全に予防する方法はありませんが、早期発見が進行を防ぐ鍵となります。
•学校検診:日本では小中学校での側弯症検診が行われています。
•家庭での観察:親が日常的に子どもの姿勢や背中の左右対称性を確認する。
•運動:筋力強化や体幹バランスを高める運動は、姿勢の維持に役立ちます。
7. まとめ
思春期特発性側弯症は、原因不明ながら成長期に多く見られる疾患です。軽度であれば治療の必要はありませんが、中等度以上では装具療法や手術が必要な場合があります。早期発見により進行を抑え、適切な治療を行うことで、健康や生活の質を維持することが可能です。家族や医療機関が協力して、子どもの姿勢や背中の変化に注意を払い、必要に応じて早期に対応することが重要です。