野球肘 内側型
小児の野球肘(内側型)の病態とリハビリ治療について(約1000文字)
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小児の野球肘は、成長期の投球動作によって肘に繰り返しのストレスが加わることで起こる障害です。中でも内側型は最も頻度が高く、小学生〜中学生の野球少年に多く見られます。放置すると成長障害や変形を残す可能性があるため、早期発見と適切なリハビリが重要です。
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【病態】
内側型野球肘は、投球動作におけるリリース直前からフォロースルーのタイミングで、肘の内側(尺側側副靱帯周辺)に牽引力(引っ張られる力)がかかることで発生します。小児の場合、この部分の骨端線(成長軟骨)がまだ未熟なため、繰り返しの負荷により骨端線離開や内側上顆の裂離骨折、さらには尺側側副靱帯損傷などが起こります。
特に小学生では骨が柔らかく、靱帯より骨の損傷が先に起こりやすいのが特徴です。進行すると投球不能になるだけでなく、**内反肘変形(肘が内側に曲がったまま固まる)**をきたすこともあります。
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【症状】
• 投球時、特にボールをリリースする瞬間の肘内側の痛み
• 投球後のうずくような痛み
• 肘内側の圧痛(押すと痛い)
• 肘の曲げ伸ばしの制限(可動域制限)
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【診断】
• X線で内側上顆の骨端線離開や裂離骨折の有無を確認
• **超音波(エコー)**検査で軟部組織の損傷や腫れをチェック
• MRIは靱帯や軟骨の損傷の詳細を確認するのに有効
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【リハビリ治療】
内側型野球肘の治療は、保存療法が基本です。損傷の程度に応じて、以下の3段階に分けて段階的にリハビリを行います。
① 急性期(~2週間)
• 完全安静:投球・打撃は中止。痛みを悪化させないことが最優先。
• アイシングや鎮痛消炎処置
• 痛みが強い場合は装具固定や三角巾使用を行うこともあります。
② 回復期(約2週間~6週間)
• ストレッチ:肩甲帯、前腕、手関節などの柔軟性を高める。特に内側側副靱帯へのストレスを減らすため、肩や体幹の柔軟性が重要。
• 筋力トレーニング:肩周囲・体幹・下肢の筋力強化。肘だけでなく、全身を使ったフォームへ改善するための土台作りを行います。
• フォーム修正:理学療法士やトレーナーの指導のもと、肘の負担が少ない投球フォームを身につけます。
③ 復帰期(6週以降)
• 段階的投球再開:キャッチボール→遠投→ブルペンと負荷を徐々に増やします。
• 投球数や投球強度は医師の指導のもとで慎重に調整します。
• 再発予防プログラム:フォーム再構築・筋力維持・コンディショニングを継続的に実施。
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【予防のポイント】
• 1日の投球数制限(目安:小学生は50球以内)
• 週2日以上の休養日を設ける
• 投球後のアイシングやストレッチの習慣化
• 投球フォームの見直し(過度なオーバースローや手投げの修正)
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【まとめ】
内側型野球肘は、成長期の肘関節に過剰な牽引ストレスがかかることで起きる障害であり、早期に対応すれば多くの場合は保存的治療で改善します。痛みを我慢して投げ続けることが重症化の最大のリスクであるため、早期発見・早期リハビリが極めて重要です。