大腿骨骨頭すべり症|山田整形外科医院|埼玉県ふじみ野市の整形外科

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大腿骨骨頭すべり症

大腿骨頭すべり症のリハビリ治療

大腿骨頭すべり症(SCFE: Slipped Capital Femoral Epiphysis)は、思春期の子どもに多く見られる疾患で、大腿骨頭が成長板を中心にして後方や下方へずれる状態です。肥満や急成長がリスク要因とされ、股関節の痛み、歩行困難、跛行(足を引きずるような歩き方)が主な症状です。治療の目的は、骨頭のずれを固定し、それ以上の進行を防ぐことです。手術後のリハビリ治療は、股関節の機能回復と歩行能力の改善に重要な役割を果たします。

1. リハビリ治療の目的

•痛みの緩和と炎症の軽減

•股関節の可動域(ROM)の改善

•筋力の強化と安定性の向上

•正しい歩行パターンの再獲得

•再発や合併症の予防

2. リハビリ治療の流れ

① 急性期(手術後~数週間)

この時期は、手術による影響を最小限にし、患部を保護することが重要です。

•安静と患部の保護

•股関節への負担を最小限にするため、松葉杖を使用し、体重をかけない歩行(免荷歩行)を徹底します。

•必要に応じて装具を装着し、安定性を保ちます。

•痛みと炎症の管理

•冷却療法(アイシング)を1日数回、15~20分行い、炎症を抑えます。

•軽い可動域運動

•痛みが出ない範囲で、膝や足首の運動を行い、下肢全体の血流を促進します。

•股関節の過度な動きは避ける必要があります。

② 回復期(手術後数週間~数ヶ月)

痛みが軽減した段階で、可動域の改善と筋力強化を進めます。

•可動域改善運動

•理学療法士の指導の下、股関節の屈曲、外転、内旋などの運動を始めます。

•痛みがない範囲で行い、無理な可動域拡大は避けます。

•筋力強化運動

•大腿四頭筋、ハムストリングス、中殿筋、股関節周囲の筋肉を強化します。

•等尺性運動: 股関節を動かさずに筋肉を収縮させる運動(例:足をまっすぐ伸ばした状態で膝を軽く押し付ける)。

•抵抗運動: セラバンドを使用し、軽い負荷を加えて筋肉を鍛えます。

•体幹トレーニング

•股関節の安定性を向上させるために、体幹(コア)を鍛える運動を取り入れます。

③ 機能回復期(歩行の再開と日常生活復帰)

歩行の再訓練と日常生活動作の改善を目指します。

•体重負荷の再開

•徐々に体重を股関節にかける訓練(部分荷重歩行→全荷重歩行)を行います。

•歩行訓練では、松葉杖を段階的に外し、正しい歩行パターンを学びます。

•バランス訓練

•片足立ちやバランスボードを使用し、股関節の安定性を高めます。

•日常生活動作訓練

•床に物を拾う、階段を昇降するなどの日常的な動作を再学習します。

3. 物理療法の活用

•温熱療法

血流を促進し、筋肉の緊張を緩和します。リハビリ運動の前に行うと効果的です。

•電気刺激療法(EMS)

筋力を回復させるために、弱った筋肉を刺激します。

•超音波療法

組織の回復を促進し、痛みを軽減します。

4. 家庭でのセルフケアと注意点

•運動の継続

リハビリで学んだ運動を日常生活に取り入れ、筋力や柔軟性を維持します。

•体重管理

肥満は股関節に過剰な負担をかけるため、適切な体重を維持することが重要です。

•無理をしない

痛みが再発した場合や動作中に異常を感じた場合は、すぐに医師や理学療法士に相談します。

5. 注意点

•早期に適切な治療とリハビリを行わないと、大腿骨頭の変形が進行し、将来的に股関節症や変形性股関節症へとつながるリスクがあります。

•専門家の指導の下でリハビリを進めることで、正しい動作や姿勢を学び、再発や合併症を予防できます。

まとめ

大腿骨頭すべり症のリハビリ治療は、股関節の機能回復と日常生活への適応を目的に、段階的に進めることが重要です。急性期では安静と患部の保護に重点を置き、回復期には可動域改善や筋力強化を進め、最終的に正しい歩行パターンを再獲得します。専門的な指導と患者自身の取り組みを組み合わせることで、股関節の長期的な健康を守ることが可能になります。