デュピュイトラン拘縮とは
デュピュイトラン拘縮とは
デュピュイトラン拘縮(Dupuytren’s contracture)は、手のひらにある腱膜(手掌腱膜)が異常に肥厚・短縮し、指が徐々に曲がって伸ばせなくなる疾患です。特に薬指や小指に多く見られます。進行すると日常生活に支障をきたし、ボタンの留め外しや物を握る動作が困難になります。
病態
デュピュイトラン拘縮の病態は、手掌腱膜に異常な線維化が生じることにより発症します。具体的には、以下のような過程で進行します。
1. 初期(結節形成期)
• 手のひらに小さな硬いしこり(結節)ができる。
• 痛みはほとんどないが、軽い違和感を覚えることがある。
2. 進行期(索状物形成期)
• 結節が索状(コード状)に変化し、指を曲げる腱に沿って伸びていく。
• 指が徐々に曲がり、伸ばしにくくなる。
3. 拘縮期
• 指の関節が固定され、完全に伸ばすことができなくなる。
• 特にPIP関節(近位指節間関節)での拘縮が顕著。
• 放置すると日常生活動作(ADL)に大きな影響を与える。
原因とリスク因子
明確な原因は不明ですが、以下の要因が関与すると考えられています。
• 遺伝的要因:家族内発症の報告が多い。
• 年齢・性別:50歳以上の男性に多い。
• 生活習慣:喫煙、アルコール摂取、糖尿病との関連が指摘されている。
• 職業・手の使用:手を頻繁に使う職業(大工、農業など)で発症率が高い。
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リハビリテーション(保存療法)
デュピュイトラン拘縮のリハビリは、進行を抑えたり、手の機能を維持・改善したりすることが目的です。軽度の場合には、手術を回避するために保存療法が推奨されることがあります。
1. 伸展ストレッチ
拘縮の進行を遅らせるために、指をできるだけ伸ばすストレッチを行います。
• 手掌ストレッチ:平らなテーブルに手のひらを押し付ける。
• 指伸展運動:反対の手を使って指をゆっくり伸ばす。
2. マッサージ・軟部組織リリース
• 手掌腱膜の柔軟性を保つため、軽くマッサージを行う。
• 筋膜リリースを行い、組織の癒着を防ぐ。
3. 装具療法
• 指を伸ばすための装具(スプリント)を装着する。
• 夜間装着することで拘縮の進行を抑える。
4. 手の機能訓練
• 握力や巧緻性(指先の器用さ)を維持するためのトレーニング。
• 例:スポンジボールを握る・広げる運動。
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手術後のリハビリ
進行した場合、手術(腱膜切除術や皮下筋膜切開術)が必要になります。術後は以下のリハビリを行います。
• 傷口のケアと浮腫管理
• 手を心臓より高くして腫れを防ぐ。
• 軽いマッサージでリンパの流れを促す。
• 可動域訓練
• 手術後早期から指を伸ばすリハビリを開始。
• 過度な負荷をかけず、ゆっくり動かす。
• 筋力強化
• グリップエクササイズなどで握力を回復させる。
• 生活動作(ペンを持つ、ボタンを留める)をリハビリに取り入れる。
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まとめ
デュピュイトラン拘縮は、手掌腱膜が異常に肥厚し、指が曲がる疾患です。進行すると日常生活に影響を及ぼしますが、ストレッチや装具療法などのリハビリによって進行を遅らせることができます。重症例では手術が必要となりますが、術後のリハビリが重要であり、適切なケアを行うことで手の機能を維持できます。