野球肘 外側型
小児の野球肘(外側型)の病態とリハビリ治療について(約1000文字)
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野球肘とは、野球などの投球動作によって肘関節に繰り返しストレスが加わることで生じるスポーツ障害の総称であり、小児・成長期の選手に多く見られます。大きく「内側型」「外側型」「後方型」に分類されますが、ここでは外側型の病態とリハビリテーション治療について解説します。
【病態】
外側型野球肘は、投球時に肘の外側に過度な圧縮ストレスがかかることで、上腕骨小頭(じょうわんこつしょうとう)と橈骨頭(とうこつとう)との間に骨軟骨損傷を生じるものです。成長期の肘関節はまだ完全に骨化しておらず、軟骨部分が多いため、過度な負荷により**離断性骨軟骨炎(OCD)**という病変が発生します。
このOCDは、放置すると軟骨が剥がれ関節内に遊離体(関節ねずみ)を生じる恐れがあり、重症例では手術を要することもあります。早期の診断と治療が極めて重要です。
【主な症状】
• 投球時や投球後の肘外側の痛み
• 可動域制限(特に伸展制限)
• 疼痛による投球フォームの乱れ
• 肘を押すと痛む(圧痛)
早期では痛みだけですが、進行すると投球不能となる場合もあります。
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【リハビリ治療】
治療は、病期(急性期、回復期、復帰期)に分けて行います。
① 急性期(炎症期)
• 投球中止(安静):まずは投球動作を中止し、炎症の沈静化を図ります。
• アイシング・消炎処置:痛みや腫れが強い場合は冷却を行い、医師の指導のもと鎮痛剤が使用されることも。
• 医師による経過観察:X線やMRIで骨軟骨の状態を評価し、進行度を判断します。
② 回復期(リハビリ期)
• 可動域の改善:肘関節の柔軟性を取り戻すため、ストレッチや関節モビライゼーションを行います。
• 筋力強化:肩甲骨周囲、体幹、前腕、手関節の筋力トレーニング。特に肩甲帯と股関節の連動性を高めることで、肘への負担を軽減します。
• フォーム修正:理学療法士やトレーナーと連携し、投球フォームの改善に取り組みます。
③ 復帰期(競技復帰期)
• 段階的投球開始:ノースローからキャッチボール、遠投、ブルペン投球と、段階的に負荷を上げます。
• 動作指導:肘に過剰な負担がかからない投球フォームの習得が不可欠です。
• 再発予防:トレーニングの継続、投球数制限、定期的なメディカルチェックを実施します。
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【まとめ】
外側型野球肘は、成長期特有の骨軟骨の脆弱性に加え、投球過多やフォーム不良が原因となって発症します。特にOCDは進行すると治癒に時間がかかり、競技復帰が困難になるため、早期発見・早期治療が鍵です。保存療法が中心ですが、正しいリハビリとフォーム修正を行うことで多くの選手が復帰可能です。