熱中症対策と運動療法
熱中症対策を踏まえた運動療法
近年、夏季の高温化に伴い熱中症の発生が増加しており、運動療法を実施する際にも十分な注意が必要です。熱中症は体温上昇と脱水により発生し、筋肉痙攣や倦怠感などの軽症から、意識障害や臓器障害を伴う重症まで幅広い病態を呈します。特に高齢者や基礎疾患を有する患者は体温調節機能が低下しており、運動負荷によるリスクが高まります。
運動療法を安全に行うためには、事前・実施中・事後の3段階で対策を講じることが重要です。まず事前には、室温・湿度を確認し、屋内では空調を適切に使用します。WBGT値(暑さ指数)が28℃を超える環境では強い運動は避けるべきです。服装は吸湿性・通気性に優れたものを選び、帽子やタオルなども有効です。また、水分補給は運動開始前から行い、発汗に応じて0.1~0.2%の塩分を含む水分をこまめに摂取します。
運動中は、強度を低~中等度に設定し、連続運動は30分以内、休息を挟むことが望ましいです。患者の顔色、発汗量、脈拍を観察し、めまい・吐き気・過度の疲労感などの症状があれば速やかに中止します。特に下肢筋力強化や関節可動域訓練は室内でも十分実施可能であり、体幹トレーニングや有酸素運動も低負荷で工夫できます。
終了後は体温測定や体調確認を行い、水分・電解質の補給を継続します。冷房や扇風機で体温を下げると回復が早まります。これらの対策を徹底することで、熱中症のリスクを最小限に抑えつつ、安全で効果的な運動療法を提供することが可能です。