膝関節滑膜ひだ障害とは
膝関節滑膜ひだ障害(タナ障害)の病態と運動器リハビリテーション
膝関節滑膜ひだ障害は、膝関節内部に存在する滑膜ひだ(主に内側滑膜ひだ=タナ)が肥厚し、膝の屈伸運動に伴って大腿骨顆部や膝蓋骨との間で挟まることで痛みや引っかかり感を生じる疾患である。滑膜ひだ自体は多くの人に存在する正常構造だが、スポーツなどによる膝の過使用、屈伸の繰り返し、外傷後の炎症などが契機となり、ひだが腫脹・肥厚することで症状が出現する。特にランニング、ジャンプ動作、階段昇降などで膝蓋大腿関節にストレスがかかると症状が悪化しやすい。また膝伸展位での膝蓋骨内側部痛、屈伸時のクリック感、膝前内側の局所圧痛が特徴的である。類似疾患である膝蓋大腿関節症や半月板障害との鑑別が重要となる。
運動器リハビリテーションの主な目的は、(1)滑膜ひだへの機械的刺激を減らすこと、(2)膝蓋大腿関節のアライメント改善、(3)大腿四頭筋や股関節周囲筋の筋機能改善である。特に内側広筋(VMO)の機能低下は膝蓋骨の外側偏位を助長し、滑膜ひだへの摩擦を増やすため、適切な筋力強化が不可欠となる。具体的には、大腿四頭筋の等尺性収縮、SLR(ストレートレッグレイズ)、内側広筋を意識した膝伸展運動などを段階的に行う。また股関節外転筋や外旋筋の強化も下肢全体の力学的改善に寄与する。
さらに、柔軟性の改善も重要であり、ハムストリングス・大腿四頭筋・腸脛靱帯のストレッチを行うことで膝蓋骨周囲の過負荷を軽減できる。炎症が目立つ急性期にはアイシングや物理療法で疼痛を抑え、活動量を一時的に調整することが有効である。症状が落ち着いてきたら、スクワットやランジなどの機能的トレーニングを痛みの範囲内で導入し、最終的にはスポーツ動作の再獲得を目指す。多くの症例では、適切なリハビリによって手術を要さず改善が期待できる。