橈骨骨折は、前腕にある2本の骨のうち、親指側に位置する「橈骨(とうこつ)」に発生する骨折を指します。特に、橈骨の遠位(手首に近い部分)の骨折は一般的で、「橈骨遠位端骨折」と呼ばれることが多く、高齢者や骨粗鬆症患者に頻繁に見られます。この文章では、骨粗鬆症との関連を中心に、橈骨骨折の原因、症状、治療法、予防について説明します。
1. 橈骨骨折の原因
橈骨骨折の原因は、以下のような外部からの力が加わった場合がほとんどです。
•転倒事故
手をついて転倒する際、手首に強い衝撃が加わることで橈骨が骨折します。高齢者では、骨粗鬆症が背景にあると骨折のリスクが増加します。
•スポーツや交通事故
高い衝撃を伴う状況下での骨折も一般的です。
•骨粗鬆症
骨密度の低下により、わずかな衝撃でも骨折する可能性があります。特に高齢女性に多く見られます。
2. 骨粗鬆症との関係
骨粗鬆症は骨の密度が低下し、骨がもろくなる疾患です。これにより、転倒などの軽微な外傷であっても骨折が発生しやすくなります。特に橈骨遠位端は、薄い皮質骨で構成されているため、骨粗鬆症の影響を受けやすい部位です。
高齢者におけるリスク
•骨粗鬆症の患者は、通常の骨密度の人と比べて骨折リスクが数倍に増加します。
•女性は閉経後に骨密度が急激に低下するため、橈骨骨折の発生頻度が男性の2~3倍となっています。
3. 橈骨骨折の症状
橈骨骨折の症状は、骨折の種類や程度によって異なりますが、主に以下の症状が見られます:
•腫れや痛み
骨折部位が腫れ、強い痛みを感じます。
•変形
骨折がずれている場合、手首の見た目が変形していることがあります。
•機能障害
手首や指を動かすことが難しくなります。
•内出血
骨折に伴う血管損傷により、皮膚に青紫色の内出血が現れることがあります。
4. 橈骨骨折の治療
橈骨骨折の治療法は、骨折の種類や患者の状態(骨粗鬆症の有無など)によって異なります。
保存療法
•骨折のずれが軽微な場合、ギプス固定が選択されます。
•骨が自然に治癒するのを待ちながら、期間中は痛みのコントロールを行います。
手術療法
•骨が大きくずれている場合や、関節面が損傷している場合には手術が必要です。
•金属プレートやピン、スクリューを使用して骨を固定します。
骨粗鬆症治療の併用
•橈骨骨折が骨粗鬆症に起因する場合、骨密度を改善する治療(カルシウムやビタミンDの補給、骨吸収抑制薬の投与など)を並行して行います。
5. 橈骨骨折のリハビリ
治療後、機能回復のためにリハビリテーションが重要です。リハビリでは以下のようなプログラムが行われます:
•関節の可動域訓練
固定後に硬くなった関節をほぐす訓練。
•筋力強化
筋肉の萎縮を防ぐため、手首や前腕の筋力トレーニングを行います。
•日常生活動作の訓練
自立した生活に戻るためのサポートを行います。
6. 橈骨骨折の予防
骨粗鬆症がある場合、骨折の予防が特に重要です。以下の対策が有効です:
(1) 骨粗鬆症の治療
•カルシウムやビタミンDを十分に摂取する。
•骨密度を増加させる薬(ビスホスホネート、デノスマブなど)を使用する。
(2) 運動
•骨を強くするため、適度な負荷のかかる運動(ウォーキングや軽い筋トレ)を継続します。
(3) 転倒防止
•家の中を整理し、つまづきやすい障害物を取り除く。
•足元を滑りにくくする靴を履く。
•バランス訓練を行い、転倒しにくい体作りを目指します。
7. まとめ
橈骨骨折は骨粗鬆症患者に多く見られる骨折であり、軽微な外傷でも発生するリスクがあります。治療法は、保存療法から手術療法まで幅広く、骨粗鬆症の治療を並行して行うことで、再発防止につながります。また、日常生活での転倒予防や骨密度の改善を目指すことが、骨折の予防において非常に重要です。適切な治療とリハビリを受けることで、早期回復と生活の質向上が期待されます。